立川マンドリンクラブ会報 18号2006.11.4発行
「四季」編曲奮闘記(1)河邊奈津子
毎年編曲をやらせていただいていますが今年は曲が「四季」と決まったのは1月初めだったかと思います。
その頃のメールでのやりとりをみてみると豊田さゆりさんはその時点ですでに「四季」をかなり聴き込んでいる様子・・・私自身はお恥ずかしながら春の1楽章が思い浮かぶ程度でCDを聴けば「ああ、聴いたことある・・・」というレベルでした。
そして次の鹿野代表からのメールでは「河邉さん、全体の楽譜を見て、マンドリンでも情景がうまく出せそうな楽章等を教えてください。」とのこと。はい、言うのは簡単なんです。あっ、決して鹿野さんを責めているわけではありません。

それから私の苦悩が始まります。
四季」は皆さんご存知のように春夏秋冬それぞれ3楽章ずつあり、曲想も全て違うわけですから1楽章を1曲と数えれば全部で12曲にもなるわけです。
その中から良さそうなものをピックアップするだけでも非常に大変な作業でした。まずはさゆりさんから早々に原譜のコピーをいただきました。それから近所の図書館でCDを借りてきました。編曲の作業の最初はいつもそうなのですが、とにかくCDを聴きまくります。家にいる時はなるべくCDをかけっ放しにしておきます。・・・と言ってもずっと家にいられるわけでもないし、子供が他の曲を聴きたがったりテレビを見たりするのでなかなか落ち着いて聴くことはできません。でもとにかく何かをしながら聴くようにします。
お皿を洗いながら、洗濯を干しながら、食事をしながら・・・

ここで気づいたのはさゆりさんからいただいた原譜にはチェンバロパートがありませんでした。たまたま私の友人で楽器店に勤めている人がいるので頼んでチェンバロ付きの原譜を手に入れました。それまではCDを聴いてはいましたがまじめに楽譜を見ながら聴くことはできていませんでした。改めて楽譜を見てみるとその膨大な量に愕然としました。そしてどこから手をつけて良いのやら途方にくれてしまいました。そんな状態でどんどん日々が過ぎてゆきあっという間に3月になってしまいました。
そんな頃さゆりさんから「私に出来ることは相談に載りますので、言って下さいね。」とメールがきました。その優しいお言葉に涙しそうでした。そして実はその時点では何一つできていなかったのです。とにかく何かやらなければ・・・と思うのですが気が焦るばかりで全くはかどりません。あげくの果てには「四季」という言葉が怖くさえなり、「やはりこの編曲は引き受けなければ良かったかも・・・」等と考えたり、パニック状態?!(ちょっとオーバーですが・・・)
見るにみかねた同居のギターパートリーダー&システムサポーター(?)がどこからか「四季」の楽譜データを探してきてパソコンに入れてくれました。このおかげで一筋の光が見えてきました。とにかく自分の気に入ったフレーズをピックアップして春から順番に楽譜を切り張りするように並べてみました。コンピュータはそのままつなげて演奏してくれます。味気ないし、ところどころデータが壊れていたりするのでへんてこりんな演奏ですがそれなりに雰囲気はつかめます。
最初に悩んだのは曲の構成です。当初は春の1楽章を曲頭にするつもりでした。「四季」といえばこの曲ですから。そして次にラストをどの曲にするか考えました。やはり速いテンポで激しく終わる方が弾いている方も気持ちがいいし、聴いているお客さんにも分かりやすいのではと思い、そんな部分を探しました。夏の3楽章か冬の1楽章のどちらにするか悩みましたが夏のほうがフレーズが少し難しそうです。難しいと音量が出ない恐れがありますので無理をせず冬にすることにしました。最初が春でラストが冬に決まりました。それならばあとの順番は季節の順にすることにしました。曲の構成がおかしくなければ季節の順番にこだわるつもりはなかったのですがこの時点ではそれを決めてしまわないと前へ進めない状況でした。 (つづく)