立川マンドリンクラブ会報 第702019.10.13発行
私の楽器 私のSuzuki No.208マンドリン
2nd Mandolin 石井 康五
 私のマンドリンとの出会いは、高校1年の秋(昭和26年秋)、親戚からもらった中古のマンドリンでした。それから、神田神保町にあったレッスン所通いが始まったのです。当時は、明大のマンドリンクラブが一世を風靡していたころで、マンドリンは脚光をあびていた時期だったことを思いだしています。
 高卒を控え、受験準備等で、一時ブランク時期がありましたが1960年(昭和35年秋)の大卒の年、新しい楽器が欲しくなり、通いなれた神保町で楽器店に飛び込み、現在の鈴木のマンドリンをケース付きで七千八百円で買ってしまったのでした。(当時、大卒の初任給は九千八百円でした。)


 器種は Suzuki No.208 (鈴木バイオリン製) 
 今もって立派に役目を果たしてくれております。
 当時、大学では、都内の全寮制でしたので週1回のレッスンを中古楽器で継続し、大卒就職後はこの Suzuki No.208 が海上勤務、海外駐在等を経て、いつも付かず離れず、私の余暇を慰めてくれる存在でした。
聞くところによると、鈴木バイオリン製造(株)では、現在マンドリンの製造は行っていないようで、この Suzuki No.208 の故事来歴等を鈴木バイオリン製造(株)に直接メールで問い合わせたところ、約一週間後に『過去の資料が乏しく、ご納得のいく回答には
ならないかもしれませんことを、まずお詫びいたします。』との前置きで
 製造期間   1960年~1965年    (注;昭和35年?40年)
 販売価格   ¥6,500.-        (注;本体価格)
 高級選良のエゾ松表甲,胴には洋材を使い義甲板、縁飾共に美しい貝象嵌入りの佳麗な仕上がり。
 との返事をもらいました。これで私の“ケース付きで七千八百円”の記憶は間違いなかったと思います。当時、月給手取りの全額に近くをはたいて購入し、親に叱られたことも今は懐かしく思い出されます。(ケースは五年ほど前に新替)
 現在に至る約59年間、実に手間のかかからない楽器で、記憶としてもナット部を
補修取り換えたぐらいで、大がかりな修理の記憶はありません。今は少し気がかりといえば、フレット部の摩耗が気になってきましたが、音だけは心地よく響くので満足しております。  かつて、レッスンの先生に「マンドリンは どの様な音色がベストでしょうか?」とたづねたところ、「それは、個々人の“好み”ですよ!!」と返答されたことがありました。
 私の人生で半世紀にわたって付いてきてくれている、このSuzuki No.208 に感謝を込めて筆を置きます。