立川マンドリンクラブ会報 第60号2017.04.02発行
ゆ ず         Mandola 香月 博子
 私は、幼いころ岡山県北部の祖父の家に疎開していました。うさぎ追いしかの山~ の風景そのままの田舎。
 当時、柚子の樹が、立派な祖父の家(もう築130年になりますが)その庭先に大木で繁っていました。
 大晦日かお正月三が日の行事か遠い記憶で申し訳ありませんが、戦後間もなくの頃の私の思い出話になります。
 夕方、日が暮れて、1人で近くの荒神さまに出かけると、真ん中に小さい囲炉裏を囲んで祖父や村のおじさん達がお酒を飲んで笑っていました。私は、入口から顔半分ほど覗くと、手招きされて、甘酒と、これから糠漬けするという前の塩漬け大根をちょっと火であぶったものをいただきました。甘くて 塩っぱくて 美味しかったと記憶しています。そして、その時、囲炉裏の火の上に、大きな柚子が輪切りにされ、中がグツグツしているものを見てしまいました。何とも美味しそうな柚子の香り…。それが初めて見たゆず味噌だったのです。
 それが後々、私の柚子に対する思い入れの元かもしれません。
 私の猫額の庭には、最初、鉢植えで購入した、本柚子、花柚子(分類はゆずではないそうです!)と金柑、全て、成長とともに地植えにしました。それにもう一本、実生(みしょう)で生えて30年のグレープブルーツ、いずれも豊作。
本柚子は、皆さんご存知の様に、「桃栗3年 柿8年、柚子の大馬鹿18年」と昔から言われます。ところが、実は、大器晩成をいっているのです。可哀想な柚子。
 柚子は、移植を嫌います。土が変わると実をつけないと言われ、私は、プラスチツクの鉢のまま植えました。お陰で毎年、大量の実をつけて喜ばしてくれます。柑橘類は特に朝日は必要なく、かんかんの西日で良いので、我が家のような環境は救われます。
 毎年、ジャム、柚子味噌、ユズコショウ、シロップ、柚子茶 などに利用します。私は、ジャムの砂糖は控えめにして、仕上げに味噌を少量足して、和洋に利用します。最近、塩柚子の味も知りました。種は、焼酎に浸けて化粧水にします。ハエも滑り落ちるぐらいスベスベになります。ムダがない植物ですね。  今年も豊作を願って、「実のなる肥料」をたっぷりあげて秋を待つことにします。