立川マンドリンクラブ会報 第59号2017.01.08発行
そこに技あり       Guitar 小池 久夫
 小学生の頃から刃物研ぎをやっていた。鉈(なた)を研ぎ丸みがあると怒られ、やっと出来たかなぁ じゃ切れ味を確かめようと、竹林でスッパスパッ切り倒してスッキリした気持ちなのに、まさかの大目玉を食らった。
 現在家にある包丁は普通の大小3本ほかに菜切り、出刃、柳刃、中華包丁・・砥ぎ始めると1日掛かりとなる、けど無心になれていいです。

 相模原の工場の中の計算センターに勤めた30代後半、会議室を開発室に占拠して、この工場から出るベニヤの端材で、幾つもの箱をカッターナイフだけで作り始めた。開発の相棒からニスの塗りの技を教わり、大きなお針箱を作成してこの箱作りは卒業することにした。というのも相棒の親父がパイプ作り職人で、何かの木の塊に吸い口と煙草を詰める穴が開いたやつを貰う。
「パイプを作ってみたら」と、見本のカタログには、シンプルなものや見事な彫刻が施された物があったりした。
「それはよ、傷とか欠陥を隠すために彫刻を入れてあるのよ」ホントこれは作っている内に実感することになった。削った先に黒い物、これを削り取った先にもまたあったりして徐々に形にならなくなり1作目は失敗。2作目の自信作をその親父に見せに行く、
「使えねえなぁ、まぁ努力を認めるからこれやる」と、貰ったのが右写真の逸品、その木の塊は木目の細かいツツジ科の根で日本の物ではないそうです。
 立飛 でバイト中、枯れたサツキに目が留まった。引っこ抜き、洗って、中心部を使って ツボ押し棒 を作る。そのうちなんとも変な形ができた。
見た人が、「それ笛を吹いている人に見えるよ」ん?ヒント貰った!
-土に帰る前にもう一度人の目にそいつを残してやろうと考えた-          職人の逸品 2作目 1作目
 サツキの根は実に面白い形をしている。泥を落としきれいに洗ったあと、要る、不要い と選別をする、もう感だけが頼りですね。もしかして本物の彫刻の作業に似ているのかもしれないと感じる。
要らないと捨てた途端もう二度と元に戻らない。最悪は作業中にホキッと無くなったりするのが、実に切なく笑えない、けど負けてられない、先に進むことを考える。大事そうに抱いている石を取り去り、皮の部分を取り除くと、何とも美しい木肌が現れて何かに見えてくる。
 作業をしていく内にどうしても、普通の切出しナイフや彫刻刀などでは物足りない。ならば道具を作るしかないかと素材を物色、ステンレス製なら何とかなりそう、使えなくなった高枝バサミの芯、拝借したマドラーなどから、小さなナイフ、刀の先端のような道具が出来た。ガキの頃からやってきた砥ぎの技が生きた感じがする。(ハサミも砥ぎますがかなり難しいですよ)

 作品は「カブトムシ」「エリマキトカゲ」「竜」「木の精霊」「舞」など勝手に名付けてみた。 カリン、杉系の木がいい肌です。竹も面白いけど曲げの技を身につけないとダメかなと思う。

 カリンは床柱にもなる木、光沢があるけどニスなど塗ってない。なぜ?そういえば大工さんカンナ削った後カンナ屑で磨いていた気がする。じゃ木で木を磨いてみたら?!なんと光沢が出てくるではないの、面白い全作品もう一度手直しする。
 私の物作りは「これは面白い」ってところが基本です。どこかでその自分が表現できていたりする、その微妙な味が分かってもらえたりする、それはかなり幸せ、もしかしてこれ芸術か?なんて思ったりね。
 いつの間にか相手にする素材が大きくなっていて、その素材の質の違いに悩んだり、どの道具を使うか迷ったり、失敗したりの連続。1つ1つにかなりの手間がかかっている。簡易な手作りの縁側(ブロック100円6個に約幅89mm×奥行910mm×高さ19mm200円板を5枚乗せただけ)に座って毎日朝の7時半~の約1時間を無心に工作に没頭する、これは私の1日を穏やかに始められる至高の時間です