立川マンドリンクラブ会報 第58号2016.10.22発行
My Hobby    Guitar 梅津 祐二
 定年後に当クラブに所属させていただき、ギター部で演奏を続けてきました。昨年の暮れ左手首が思うように動かなくなり、しばらくお休みをさせていただきました。今はなんとか演奏に参加できるようになり安堵しております。加齢によるものだと思いますが・・。さて、「トレモロ」に音楽関連でない事項を記載させて頂くことに心苦しさを感じますが、現在趣味としてはまっている「面打ち」について紙面をお借りすることにします。

「能面のような表情」とは無表情を表現するときによく使われますが、どっこい、木で彫りこまれた能面は様々な表情を呈します。特に女面の表情は多彩です。能のシテ方(主役の演者たち)の各流派では、それぞれの女面を継承しています。金春流では「小面」、観世流では「若女」、金剛流では「孫次郎」、宝生流では「節木増」を付けて舞台で舞います。橋掛かりから登場する時の面の左側の表情と、舞台を去る時に見せる面の右側の表情は違うのです。正面を向いて少し仰ぎ見るときは「照る」、うつむき加減になると「曇る」の表現になると言われています。室町の初めに観阿弥、世阿弥親子によって「猿楽」を芸術性の高い「能」に発展させたものが今日まで伝承されています。この舞台で使われている能面はこの時代に完成されていたのです。600年前にすでにその時代の面打師たちが巧みな技量をもって作り上げていたのです。現在まで綿々と写しが作られてきています。

           深 井             若 女
 目と口の表情が情動を煌めかせ、能面の幽玄さを醸し出します。その心理的な仕掛け、揺さぶりは世阿弥の意図するものだったのかもしれません。そんなものを作ってみたいと思い立ち、NHK学園の教室に通い、能面師の先生のご教授によって15面近くを打ち続けています。檜の直方体約1kg重量の材木から掘り込んで面を付けて踊っても負担にならない重さの150g位のうすい肉厚の面に彫り上げます。でも「彫り半分、塗り半分」と言われるくらい胡粉(阿古屋貝の粉末)に膠を混ぜた液を塗っては乾かしの作業を繰り返して面表面を大理石彫刻のように塗り上げ、毛書きや口紅を引く仕上げの化粧作業が微妙な表情の変化をもたらし、また大変なのです。
 現在、「深井」(隅田川の曲で武蔵野国まで攫われた子供を探しに旅する母親)と「若女」を彫っています。まだ荒彫りの段階ですが写真に示します。左に「深井」、右に「若女」を示します。顔の輪郭、目、口の彫り方でアラフォーの「深井」と18歳前後の「若女」を違う表情に仕上げていきます。女面に比べて、鬼面は彫りの難しさはありますが目の表現は複雑なものではないといわれます。最近、打ち込んだ鬼面2体「こべしみ」と「獅子口」を写真に示します。恐ろしげな目玉を成型してしまえばなんとか恰好になるようです。いずれも素人の域を出ませんし、満足のいくものではありませんが、機会があったら出来上がった面を観てやってください。2D写真と3D実物では少し見え方が異なるものですから。
もう少し若い時期に、この趣味にであっていたらと思うこの頃ですが、立川MCでの演奏への参加にも、もう少し前に出会っていたらと同様に思います。 定演に向かって日頃の練習をしていますが、壮大で緻密なアンサンブルをすることは音楽の醍醐味です。素人の域を出ない自分がいうのも烏滸がましいものではありますが、聴衆者の心を揺さぶれるような演奏ができれば素晴らしいことだ