立川マンドリンクラブ会報 第51号2015.01.18発行
三度目のコンクール Conductor 高 津 良 幸
 『神聖な検定』というのが、私にとってのコンクールの印象です。ドイツのマンドリンセミナーに参加することをきっかけにKA先生のレッスンを受けました。それこそ弦の張 り方から楽器の拭き方から重音の押さえ方、弾き方など全てが新鮮でした。
 独奏曲を学ぶということで、マンドリンを通じて音楽の勉強をすることができました。調性、テンポ、ディナーミック(音の強弱)、リズムなど読譜の仕方は、演奏する時に役立 つだけで無く、鑑賞する時にも役立っています。クラシックの演奏会に行くと思わず身体や指などでテンポを取りながら聞いてしまいます。周りには迷惑ですね(笑)。……でもジ ッと固まって聴いていると眠くなってしまいませんか?
 私のような中年が暗譜するにも工夫があるのを知りました。自分で練習番号を振ってセクションごとに練習する。楽器を持つ前にまず音名(階名)で、又はハミングでも歌える ようになる‥。これは合奏の練習方法と同じですね。まあ、偉そうな事は言えません。コンクールで 8 小節も空白の時間を生んでしまいましたからね。
 もう出ることはないと決めていたコンクールに出場を決めたのは、本当に思いがけない出来事がキッカケでした。折角再就職が決まったのに、再度受験をしなければならない状況になったのです。昨年の今頃は本当に絶望のドン底に居りました。でもこれも運命と割り切ることで、欲が出てきました。栄一さんがご逝去されたことは、悲しく、そしてチャレンジする事を後押ししていただきました。よし受験対策と、コンクール、それから通訳ガイドの勉強の三兎を追おう。やれる時にやっておこう。そう心に決めたのです。
 7月13日一次試験。 8月3日コンクール一次予選。たくさんの方に応援に来ていただいてありがとうございました。またもやギリギリ通過。8月23日二次試験。この日にガイド試験が重なったため、午前中の二次試験を受けた後、ガイド試験に駆けつけ教養科目だけ受験。10月17日合格発表。今年最大の目標はクリアしました。
 そして10月19日、三重県四日市にてコンクールの二次予選。早朝、駅前のカラオケで練習。抽選後、ホテルに戻ってひたすら二次予選の曲のみ練習。自分としては、まあまあの演奏だったのに、結果はギリギリ通過。すぐ午後の本選に向けて、ホテルに帰ったり会場の練習室で割り当て練習をしたり、間際にバタバタやっていました。本選の出番は抽選で最後だったので、ちょっと横になって休めばよかったのですが、そんな余裕は私にはありませんでした。早朝の 6 時から出番の 17 時近く、私はすっかり疲れてしまいました。 制限時間一杯の選曲で、オーバーしないかも気がかりでした。一曲目の課題曲はまずまずでしたが、何か不安感に襲われて、一曲目終わったら「早く帰りたい」と思いました。時 間が心配ですぐ二曲目に入りました。中野二郎の第二幻想曲「指がもつれて、嫌だなあ」って思いましたが、頑張って頭の中で歌いながら弾いていました。ピッチカートの所でスッカリ次の音が分からなくなってしまいました。頭の中で歌ながら、もうパニックです。結局8小節の空白の時間の後に、また指が動き出しました。もうその後は散々で、「早く帰りたい」一心で、何とか三曲目を弾き終えました。
 でも気分はスッキリしていました。「やっぱり人前でソロ弾くのには苦手だなあ、 でも これで全て終わり。結果なんてどうでもいいです。」…そうしたら結果発表で、最初に 「次位 高津良幸さん」って呼ばれたんです。本当に申し訳ないやら、嬉しいやら。壇上に 呼ばれて巨大な賞状を貰え大満足です。立川にも所縁があるF先生から表彰式の後「本当 に音色が綺麗だったのに、残念です」と、直接お言葉を頂きました。KO 先生からも「和声 を意識して音色を変えていてとても良かった。」東北の重鎮のT先生からも「音色を変える ことはなかなかデキる事じゃない。」九州の演奏家でもあり、指導者でもあるT先生からも 「私に無いものを持っていて、羨ましい」など、ねぎらいの言葉を直接いただけたのは宝 物です。何よりも師匠から「課題曲は一番よかった。高津さんの世界は伝わりましたよ」 と言われたのも嬉しかったです。慰めの言葉を都合良く美化しているだけかもしれません が、嬉しい言葉は心に残るものなのですね。 また街の音楽愛好家が集うスポットを幾つも知ることができ、心豊かに過ごす楽しみが 増えました。国分寺のクラスタの時にはたくさんの方に足を運んで頂き、ありがとうござ いました。気楽にふらりと立ち寄って弾きたい曲を弾くのが、自分の性分に合っています。 不定期でも単発でも、何か皆さんにお役に立てることができれば嬉しいのですが……。 でもいつでも陰ながら皆様の益々のご清栄を心より祈っております。