立川マンドリンクラブ会報 第46号2013.10.19発行
雑考「マンドローネ」
前マンドラパートの野崎さんからの寄稿   野崎泰広
 振り返ると、マンドリンに触れるようになってから、早や 12 年が過ぎた。そして今年4月に、心機一転 マンドローネにチャレンジすることになるとは・・・・
 それから6か月過ぎた9月17日、八王子オリンパスホールでのプリモ定期演奏会に、ローネを抱えての初出演となった。
(マンドリンでさえ演奏技術が未熟にもかかわらず)見たことも触ったこともなかったローネの「ヘ音記号」という未知の世界に入った。巨大で重く、靴紐のように太い弦を見たときは、「これはまずい!」と弱気になったことも。しかし、ローネに対する好奇心の高揚を抑えきれず、何と かなるだろうと腹をくくって、自己流の練習を開始しました。
1)まず、ヘ音記号とは何か?考えるのをやめた。4弦(高音から C-G-D-A、それぞれ弦が2本ずつある)のフレットの音階をドレミで覚えることにした.幸いにも、譜面上の音符の数が少ない、苦手なハイポジションへの移動が少ない、メロディは弾かないなど、当面 複雑な技術は要らない 2)ただ、弦が太いので、手首ではなく腕を使わないと響きのいい音が出ない。スラーや全音符などをトレモロで弾く場合は、これも手首では弾けないので腕を使う(トレモロは案外難しい)
3)速い曲の場合は、まだ、ついていけないので各小節の1拍目の音だけ弾く(省エネ奏法!)
4)低音部分の D 線、A 線の場合のトレモロは音がバシバシ割れるので、単音(ダウン)を弾いてその音符の分長く伸ばす。いろいろ工夫しながら(この工夫が楽しい)何とかものにしたいと静かに情熱をかきたてて、今日まで来ました。
 さてローネは一体どういうものか(私がそうであったように)、わからない方が多いのではないでしょうか。

Q1 マンドローネ(mandolone)とはどんな楽器?
A)マンドリン属の最低音域を受け持つ楽器で、マンドロンチェロより低いが、バイオリン属の最低音域楽器のコントラバスよりもやや高い。楽譜は、コントラバスとほとんど同じものを使っているが、最低音の A(ラ)より低い音はオクターブ上げて弾く。音色は、コントラバスが擦弦楽器であるため、同じ撥弦楽器であるマンドロンチェロに似ているというか、むしろこのチェロを補完する楽器というべきか。

Q2 大きさ、重さは?
A)弦長(ナット~ブリッジ)をみると、マンドリン 34cm、マンドラテノール 44cm、ローネ(渡辺製)78cm ちなみにコントラバスは 104cmぐらい。重さは、測るのは難しいから比較できないが、とにかく重い

QQ3 演奏方法は?
A)ボディのテールピースのやや奥の方に空いた穴にエンドピン(長さ30~50㎝)を差し込み、それを右脚ひざ裏に挟み込んで固定する。それでもボディが滑るので、両ひざ上に滑り止めを敷いて抱え込む。ネックが顔のはるか左上にあるため、左腕を長く伸ばす。柔らかいナイロンかプラスティックの大きめのピックを使い、マンドリン同様、サウンドホールの下部あたりの弦域を弾く。

Q4 演奏会であまり見かけないが?
A)日本のマンドリンオーケストラでは、最低音部はコントラバスが担当することが多い。 ローネは音の立ち上がりがすぐれていることと、コントラバスでは音色がマンドリン属とは異なることから一緒に演奏することがある。ただ、ローネそのものの台数が少なく、指導方法も確立されてない、演奏者も少ないなどで見かけることが稀になっている。

Q6 弾いてみた感じは?
A)とにかく大きくて重い 左手で持ち上げると10秒ももたない。しかもエンドピンのおかげで、演奏の前後はそれを入れたり外したり、余計な動作を強いられる。隣で弾くコントラバスとほぼ同じ楽譜を弾くので、気は楽だが、間違うと目立つかも。コントラバスとの違いを出そうと、音の出だしに力んだり、トレモロに力を入れたり、無駄な気負いが出てくる。一番難渋するのは、左腕を大きく上げて弦を抑えるため、左腕にしびれやコリ が出る さらにエンドピンを右脚で抱え込むために股関節が痛む。この楽器は、チャレンジ精神だけでは征服できない。体力と身体の柔軟性が必要だ。まー、それでも少しはうまくなりたいと練習に励んでいる今日この頃です。