立川マンドリンクラブ会報 第45号2013.07.21発行
『屋根の上のヴァイオリン弾き』と伊藤さんの思い出Mandola 桑原 由貴
 第32回定期演奏会で『屋根の上のヴァイオリン弾き』が再演されることが決まり、初演時に演奏したメンバーの一人として、当時の思い出を書いてみたいと思います。
 伊藤さんの編曲による『屋根の上のヴァイオリン弾き』が初演されたのは、第15回定期演奏会でのことでした。この年の演奏会は、第3部をミュージカル特集と題し、そのトリの曲として演奏されたものです。
 ちなみに、第3部の1曲目は、今年演奏する『踊り明かそう』が含まれる『マイ・フェア・レディ序曲』、そして、2曲目には、デリバリなどでも演奏されることの多い『メモリー(キャッツより)』というプログラムでした。
『屋根の上のヴァイオリン弾き』と聞くと皆さん、何を連想されるでしょう?
・ブロードウェイでヒットしたミュージカル
・日本では、森繁久彌さんが主演され、連続上演記録を達成した
・「日は昇り日は沈む」の音楽
こんな感じではないでしょうか?
 私もミュージカルのタイトルと「日は昇り日は沈む」の音楽は知っていましたが、どういう話なのか、また、他にどんな音楽が使われているのかは知りませんでした。
 そこで、有志で『屋根の上のヴァイオリン弾き』を観に行き、実際に生のミュージカルに触れる機会を得ました。残念ながら私は参加できませんでしたが、こういうところが立川MCらしいなぁと思います。
 観劇された方々の感想を聞いたり、伊藤さんが解説してくださったりして、ロシアの寒村に住むユダヤ人の一家の姿を描いた話で、音楽も独特なメロディとリズムのユダヤ音楽で構成されていることを知りました。そこには、ユダヤ教のしきたりを重んじる父とそれに反発する娘たち、ユダヤ教徒の迫害など重いテーマがベースになっています。
 伊藤さんが編曲された楽譜を開いてみると、2/2拍子の独特なリズムとメロディが続き「難しそう・・・」というのが率直な感想でした。
 本格的な練習が始まったのは、夏合宿だったと記憶していますが、最初から大きなハードルにぶつかることになりました。 全員で入る最初の音(練習番号[5]番の始まり)が、どうしても合わせられないのです。 この最初の音は、1stと2ndが一緒に2拍子の2拍目の裏から入りますが、2ndがパートとして合わせられず、指揮をする伊藤さんから笑顔が消え、みるみる険しい顔になっていき、当時パートリーダーをしていた私の顔は青くなりました。 ただ、当時も結束の強い2ndパートのこと、2日目の合奏では、何とか合わせられるよう、空いている時間にパート練習に励み、それでも足りずに、早朝練習までこなしたのです。そうして迎えた合奏練習では、努力を評価していただけるようなレベルまでこぎつけることができました。その後も、こつこつと練習を重ね、演奏会では息の合った演奏を披露できたように思います。
 今年の演奏会では、この思い出の『屋根の上のヴァイオリン弾き』を演奏します。心を込めて演奏し、天国の伊藤さんにお届けしたいと思います。伊藤さんが、ニコニコの笑顔で聴いてくださいますように。