平成25年1月9日伊藤博さんが逝去されました。訃報に接した時、頭に浮かんだシーンがあります。
一つは、私が曲選定や運営で反発するような話し方をした時「貴方は、何を言っているんですか!!」と気迫こもる目で訴えられたシーンです。しかし、私の考えや思いを詳しく説明すると「そうだったんですか!」と柔和な目に変身するシーンでもありました。 一つは、定演の打上げでアンケートを読んでいた時に、突然「このアンケートを書いた人は、音楽を全然知らない人だ!!」と憤慨したシーンです。演奏に対しての辛口な批評アンケートでした。 クラブの機関紙「トレモロ」の創刊号(平成8年6月16日発行)に、彼は「マンドリンって何だろう」の文章を寄せています。そこには、マンドリンはクラシック音楽を弾くのに最適なアマチュア楽器で、もっと多くの人に弾いてもらいたい楽器だと紹介しています。 この「アマチュア」という考え方は、その後のトレモロ紙に寄稿していただいた文章の中にも「一貫した思い」として書かれています。トレモロ第8号では「アマチュアのアマチュアによるアマチュアのための音楽の楽しみ」がマンドリン音楽の楽しみであると、プロとの違いを比較されています。 彼が立川マンドリンクラブで目指そうとしたのは、プロではない部員一人一人が知恵を出し合ってクラブを運営・演奏していく姿勢だったと思います。 しかし、単なる仲良しクラブではなく、アマチュアでも音楽に対し真摯に取り組み情熱を持って演奏をするクラブでありたいとの思いが、前述のシーンにつながっていると思います。 私は、伊藤さんのこの思いを心の支えとしながら、これからもマンドリン音楽を楽しんで行きたいと思います。 終りに、2~3のエピソードを書きます。 (FAXの想い出) ・ 私の家にFAXがない時、伊藤さんとの連絡をパソコンで行いたいと申し出たところ「何を言っているんですか!!」「代表者たる者、FAXを持たないのはおかしいです!!」と剣もほろろに言われてしまいました。そこで私は交換条件をつけました。私がFAXを入れて彼はパソコンを買うこと。 お互いにこの条件を守りましたが、彼はパソコンのメッセージ「不正な操作をしました」が許せない!とパソコンを敬遠してしまい、その後の連絡はFAXか手紙になりました。 (トレモロの想い出) ・トレモロの発行について、平成16年の新年会で伊藤さんから相談がありました。伊藤さんが部員にインタビューをして原稿を集め、その原稿を私が編集して発行する内容でしたが、翌2月に彼は体調を崩して入院してしまい、この案はとん挫してしまいました。 しかし、私は彼の思いを実現したいと思い、町野さんと神田さんに声掛けをして現在の編集委員スタッフが誕生しました。 当初のインタビュー形式ではなくなりましたが、トレモロの発行を彼は大変喜んでくれて数多くの文章を寄せてくれました。 (合宿の想い出) ・平成18年の秋の合宿初日が伊藤さんの74歳の誕生日に当たりました。その夜の懇親会で、私は爪楊枝を使いテーブルに7と4の数字を作りお祝いをしましたが、その時の彼のニコニコ笑顔が忘れられません。 ご冥福を、お祈りいたします。 |