この曲は、イタリアのオペラ作曲家アミルカーレ・ポンキエルリ(Amilcare Ponchielli 1834-1886)が1876年に発表した「ラ・ジョコンダ」というオペラの中のバレエ音楽です。
ポンキエルリはヴェルディと同時代を生きたイタリア出身のオペラ作曲家です。実力者であったにもかかわらず、音楽院教授職を追い出されてからしばらくは不遇な時を過ごしました。 その後、1872年に「婚約者」が上演されたのを機に軌道に乗り始め、次々と新作を発表していき、「レ・ミゼラブル」の文豪ヴィクトル・ユーゴーの戯曲を基にした歌劇「ジョコンダ」は彼の代表作であり、その中でもとりわけ愛され単独でも演奏されることが多いのが「時の踊り」です。 「時の踊り」はとても有名な曲。ディズニーアニメの「ファンタジア」以外でも、ナンシー・シナトラの「Like I Do」、ザ・ピーナッツの「レモンのキッス」、また最近では小柳ゆきさんの「Lovin' You」などポップスのカバーも多く、CMでも途切れなく流れています。とても愛らしく、木管のフレーズも微笑ましい曲です。 歌劇「ジョコンダ」のあらすじ ヴェネツィアの歌姫ジョコンダが思いを寄せる青年は、敵によって政界から蹴落とされた過去を持ち、彼の嘗ての恋人は、その敵によって奪われ、無理やりに妻にされてしまっています。 しかし、青年は敵の妻となった女性に今でも思いを寄せ、密かに逢瀬を続けていました。それを密偵に気づかれ、窮地に陥る青年。ジョコンダは彼女にとっては恋敵にあたるかの女性と青年を救うため、自分が、さも気があるかのように振舞って敵をひきつけます。そして、青年と彼の愛する女性が逃げおおせた後、最も憎むべき男の手に自分が汚される前に自分で命を断つのでした。 このバレエ音楽“時の踊り”もっとも華やかな音楽で、ジョコンダが悲劇に向かって突っ走る中(ジョコンダの運命が終局に近づいた第3幕)、悲劇的な運命とは裏腹に華やかな舞踏会の会場で踊られる曲です。「夜明けの時」「昼の時の入場」「昼の時の踊り」 「夕方の時の入場」「夜の時の入場」「フィナーレ」の6部分に分かれています。 「夜明けの時」 (導入部初めの9小節は演奏されない事が多い)琴の甲高い音色が響くと、弦楽器がささやくようにヒソヒソと響き、またフルートなどの木管楽器もそれに合わせるように、ふわふわと浮かぶように響き始めます。フルートが小鳥のさえずりのように、そのフレーズをつなぎ、 「昼の時の入場」 弦楽器が大きく盛り上げていくと、また、急に静かになりフルートが呼びかけると、 「昼の時の踊り」 弦楽器があの聴きなれたメロディを優しく奏でていきます。 弦楽器の後には、フルートやオーボエが楽しそうにそのメロディを追いかけていくようです。 そしてそのメロディに輝きを与えるような鉄筋の響きが心地よく響くと、なんとなく、ちょっとだけいい事した後のような、思わずニコッと照れ笑いをするようなそんなイメージでしょうか? 「夕方の時の入場」 しかし、そのメロディが終わると、フルートがどことなく影のあるようなちょっと悲しいフレーズが流れますが、また一度もとの明るいメロディに戻ります。 「夜の時の入場」 そしてまた悲しいフレーズを今度はチェロが奏でていきます。 しっとりとしたフレーズがひっそりと響くと、なんとなく不安な感じにも思えてきます。 しばらくするとハープがポロン♪と響き始めると、まどろんだ様子になり、鉄筋がポツリと響くと夜空に一番星が輝いたような景色でしょうか? チェロのフレーズが続き、しっとりとした曲調が続きますが、しばらくすると急にバ、バン!と大きなティンパニ(大太鼓)が響き、何事か?とあたりを見回すような怪しげなフレーズが続きます。 弦楽器はその後大きく盛り上がり、なだらかに終わっていくように静かになります。 「フィナーレ」 そして、いよいよラストは、トランペットが、せきたてるように始まると、ティンパニやトライアングルを巻き込んで、一気に噴き出してくるように加速して、急テンポになり弦楽器も軽やかにそれに乗るように流れ、勢いをつけると、もう止まらない。 軽快なメロディとともに明るく華やかな音楽を最後まで盛大に盛り上げてラストを飾ります。 |