立川マンドリンクラブ会報 第33号2010.7.25発行
マンドロンチェロ、憧れと現実と・・・Mandola 桑原 由貴
 歳を重ねるにつれ、耳に心地よい低音に魅かれ、弦楽器でもチェロの音を好んで聴くようになった私が、マンドリンでもマンドロンチェロ(以下チェロ)に魅かれるようになったのは、自然の成り行きだろう。立川MCでも、1st→2nd→マンドラとパートを移動し、最近は、隣りのチェロがとっても気になっていたのである。いつか弾いてみたいなぁと。
 そしてミニコンサートというチャンスが到来した。マンドラパートでパート分けして合奏してみようということになったのだ。私は、迷うことなくチェロを希望した。演奏曲目も「ララルー」と「ニュー・シネマ・パラダイス」に決まり、良く知っている曲であるし、譜面を見ても、八分音符までなのでなんとかなりそうである。ヘ音記号であることが、少し心配ではあったが、ピアノに慣れ親しんだ時代もあったことだし、たぶん大丈夫だろう・・・とその時は思ったのであった。
 早速、ピアノで音取りをして、古田さんからお借りするチェロの到着を待つことになった。
 数日後、心待ちにしていたチェロが到着した。ケースから取り出してみると、想像以上に大きくて重い。ワクワクしながら譜面を広げ、練習を開始してみた。が、早々に躓くことになった。ヘ音記号で読んでも、ドラの指使いにつられてしまうのである。マンドリン・マンドラを弾くこと約20年、頭と指には、ト音記号とその指使いがしっかり刻み込まれているようだ。さて、困った。今から、チェロの音階練習を始めたとして、音符と指を一致させられるようになるには、一体どれくらいの時間が必要なのだろうか!?
 次の週末には、第一回目のドラパートでの練習も予定されているのに、これでは、到底間に合いそうにない。お先真っ暗である。
 藁にもすがる思いで、古田さんに現状を話してみたところ、「簡単ですよ!」とのお返事。 えっ、簡単!?と疑いつつ聞いてみると、「ヘ音記号をト音記号読みして、一音下にずらして弾けばいいんですよ!」と教えて下さった。えっ、どういうこと? 一音下にずらして弾くだけで、ドラを弾く時と同じように弾けるということ?? それならできそう・・・、でも、それって邪道のような・・・。
 ト音記号方式で練習してみたところ、一音ずらすことにさえ気をつければ、すんなり弾くことができる。でも、チェロを弾くのだから、ヘ音記号とチェロの音階にこだわりたい。しかし、音階練習に励んで、譜面をさらっても、やはり、長い間の習性で、ドラの指使いにひきずられてしまうのだ。ヘ音記号とト音記号の狭間で葛藤したものの、結局、「簡単ですよ!」の囁きに抗しきれず、現実的なト音記号方式で練習し、本番を迎えることとなった。
 この場で告白したので、チェロパートに移れとは、言わないでくださいね。やはり、チェロは憧れにとどめておくのが賢明のようです。 でも、よく響くチェロの低い音を身体で感じながらの演奏は、とても心地の良いものでした。 チェロの音って本当に素敵です。