立川マンドリンクラブ会報 第31号2010.1.09発行
【動物の謝肉祭】で得た貴重な音楽体験Conductor 伊藤 博
 第28回定期演奏会は、鹿野代表の統率のもと皆さんの総力を挙げた運営により、お客様と一体化した、アマチュア音楽の楽しみを満喫した演奏ができたと思っております。
 今回は第2部で重要な『動物の謝肉祭』を担当し、部員の相川裕子さんのピアノとマンドリン合奏の協演を指揮するという、初めての貴重な経験をさせていただきました。

 相川さんは4歳からピアノを始められ、サンサーンスの凝ったピアノパートを苦もなく弾いて下さるので、何の心配もなく練習を進める事ができると考えておりました。
 ピアノ協奏曲に近いこの曲は、ピアニストに取っては、指揮者の小さな動きでも良く見え、さらに同じ旋律を奏でる事の多い低音楽器(チェロ・ギター・バス)の音が良く聴こえる位置に、ピアノを置く必要があります。この曲だけの演奏効果を考えると、ピアノコンチェルトと同じ位置に配置するのが理想的ですが、他の曲の演奏もあり、そういう訳に行かず、練習段階では、低音楽器群の背後に置く事によってチェロ・ギター・バスの音が聴こえるようになり、ほっと一息つく事が出来ました。
 ところが、演奏会当日のリハーサルを行った結果、相川さんから『チェロ・ギター・バスの音が聴こえないのです。どうしましょう』という、思いもかけない事態になってしまいました。二人で急ぎ話し合い、練習会場では同じ位置で低音楽器の音を聴く事ができたのに、演奏会場のステージでは聴けないのは何故なのか、その原因を必死に推測しました。
 結果、狭い練習会場では、低音楽器の発した音が指揮者の背中にある壁にすぐぶつかり、反響音がピアニストの耳にも即座に届くのに対して、広い会場では、ピアニストの前に座った低音楽器から発せられた音は、広い客席を通り抜けて消えてしまう事が解ったのです。ピアノの音は前に座った低音楽器奏者は勿論、指揮者にも聴こえるのですが、ステージの一番奥に座った肝心のピアニストには、前に座った低音楽器の音が聞こえて来ないのです。
 そこで、急いで相談した結果、最終的に、伊藤の動きに合わせて相川さんがピアノを弾くのではなく、相川さんのピアノの音と動きに合わせて伊藤がタクトを振って合奏する方法に急遽変更して演奏を乗り切りました。文字に書くのは簡単ですが、音にするのは大変な冒険でした。もし、皆さんがピアニストか指揮者でしたら、どのように対応されるでしょうか。

 CDが出来上がりましたら、どのような演奏になっておりましょうか楽しみです。お聴きになって皆さんのご感想、ご意見をお寄せ頂ければ幸いです。
 私は第6回の立川マンドリンクラブ定演(昭和62年)から参加し、第11回より指揮を担当しておりますが、毎回、新しい未知の音楽経験に出会い、得難い楽しみを味わっています。