立川マンドリンクラブ会報 第30号2009.11.07発行
思いを叶えたお買い物1st Mandolin 大井和子
昨年10月始めにイケガクに注文したマンドリンを5月30日、やっと手にしました。「春には出来上がります。」と言われていたので、3月頃から、そろそろ届くかな、と心待ちにしていました。4月になっても、5月に入っても、そして5月半ばを過ぎても音沙汰がないので『100年に一度の世界同時発の大不況とやらで製造元に何かあったのでは』とさすがに気になりだしました。
 また友人との電話のやり取りの中で「チョット高いマンドリンを注文したんだ。夫には言っていないけど」と、夫を隣りにして何度となく話題にしていました。夫は極楽トンボの耳、当然聞こえているはずの情報を、「知らない!聞いていない!」と言い切ります。そこで最近では隣にいても何にも聞こえていないんだと思うようになりました。でもついに5月も中ばを過ぎて「イケガクから電話ない?」「ないよ」「そう」の会話が増えました。チョット高額なことを知って、『我が家では注文した覚えはありません』と断ったのではないかとの疑念が、脳裏をかすめたのです。
 やっと届いたマンドリン、西武線での帰り、込み合う中でも身から離すのが心配で、ずっと抱えて座って来ました。両隣がいやな顔をしたら、今受け取ってきたばかりの新しい大事な楽器であることを説明して我慢してもらおうと思ったのですが、両隣はついに、私が降りる玉川上水の駅まで、無関心でした。
 私には今までのマンドリンとの音色の違いを、さほど感じる事は出来ません。でも楽器自体は色白の美しい物になりました。ファーストの皆さんに「すてき・すてき!」と祝ってもらって、うれしいことでした。
 『もう少しいい楽器を買おう』と思ったのは、定年も近い平成13~14年の頃でした。
 退職金の一部を私自身のために使おうと思ったのです。マンドリンといえばイタリア・カラーチェと聞こえていました。マンドリンの買い物を目的に、夫とイタリア旅行へ出かけようとの楽しみな心積もりをしました。
 日が経ち、時が経ち、歳もとり、熱い想いはぬるんできました。1982年に購入の“落合忠男”銘のマンドリンにも「こんな私に長く付き合ってくれて」と愛着もありました。でも、『「私の」「私による」「私のための」マンドリン』を買おうと思った定年のときの思いも捨てがたく、そして歳を重ねた今、本当に買う積りなら1日でも早くなければと気づきました。
 注文後完成を待たずに、私にもしものことが起こっても遺族に引き取らせたりはしません、の言葉に安心して注文したのです。結局、長年慣れ親しみ、またカラーチェより小ぶりで、私の体型に合っているように思われる「落合」、にしました。今度の楽器には、“落合大悟郎”の銘が入っています。代替わりしていました。

 あと何年、この楽器に向き合うことが出来るでしょうか。新しい楽器を手にして、新たな気持ちで、“心身元気な限り「立川マンドリンクラブ」を楽しませてもらうんだ”と、ひとり密かに心に刻んでいます。上達ははや望めない今、このマンドリンを生かす道は、私自身がいかに楽しい思いでこの楽器に、一日でも多く触れるかということだと思います。(さゆり様・・・少しはきれいな音が出せるように気を使います。・・)
 夫に内緒というか断りなく買ったマンドリン、夫が気づくことは無いのではないかと思っていましたが、5日ほどで「アレッ、マンドリン変わった?」「どうしてわかる?」「だって今までのは黒っぽかったけど、それは白いじゃないか」と指摘してきました。何につけても観察力は私よりある夫、「へぇ~見えていたんだ」とチョット感心した次第です。