第一楽章:夜明け
暗く 深く 山はまだ眠っていた
暗黒から薄明への微妙な光の変化がおこる
神秘な山のめざめを
マンドチェロが静かに奏す
やがて(一)日の出の時が近づく
谷々を埋めていた霧の動揺が始まる
そして東の空の淡紅が光を増し
恵まれた晴天の朝の陽が輝き出る
第二楽章:山行く歌
ゆるやかにつらなる尾根を
若人の群が辿って来る
爽快な山歩きは明るい歌声となり
山のいたずらもの“こだま”がはしゃぐ
若い足は すでに尾根から尾根をつたい遠ざかって行く
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第三楽章:高原の午後
山の牧場の真昼は すがすがしい郭公の声が
やすらう人達の眠気を誘う
草原に寝ころび見上げる大空は美しく晴れ
木々の青葉そよがせる風が
汗ばんだ肌に快い高原の真昼 |
第四楽章:麓を指して
登りには顎を出させられた山も
下りには快適に足が弾む
刈草を積み 鈴の音も軽く下ってくる馬とも競争――
爽快な そして ちょびっと哀愁の感じる下山の情景 |
これは23才(1924)の処女作であるが、第2楽章の“山祭り”が気に入らず、これを省いて3章として発表した曲である。後にこの曲の初演をいっしょに弾いた小池正夫が逝去し、その追悼コンサートに出たのが契機となりマンドリン界に戻った1965年に改作し“山行く歌”とし、原作の4楽章としたものである。
「鈴木静一 そのマンドリン音楽と生涯」鈴木静一没後15周年記念演奏会実行委員会編より抜粋
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