立川マンドリンクラブ会報 第28号2009.04.05発行
ギター雑感(楽器としての寿命について等)Guitar 日隈永治
 ギターの特色は音量の面では劣るものの、「楽器一つで和音を取り旋律を弾くことのできる自己完結型の楽器」であること、そして「その音色の美しさは他に類を見ない」ことにあると思います。
ギターについては過去有名な音楽家たちが、色々な言葉を残しています。
 「ギターは小さなオーケストラである」ベルリオーズ
 「オーケストラは大きなギターである」ベートーヴェン
 「ギターは一番美しい楽器だが、一番難しい楽器である」ドビッシー等々褒め称えています。
 ギターの製作者ではスペインのラミレス一家、フェルナンデス、アグアド、ドイツのハウザー一家、日本では中出一族、河野 賢、等色々な名工といわれる或いはいわれたギター製作者がいます。
珍しいところでは、あのストラディバリウスが作成したギターも残っているそうです。
 然し乍、ギターはその構造上、長持ちがしないということもあり、弾くためではなく、見るために存在している骨董品(楽器ではなく)として存在しているようです。
 バイオリンはその楽器としての機能が長い期間保たれているのに、ギターは何故だめなのでしょうか。素人の考えですが、私は次のように考えています。
① 構造上の問題
 殆どの弦楽器は側面板で弦を留めていると思いますが、ギターは表面板の上で弦を留めてあります。結果ギターは年を経るにつれて、弦の張力により表面板上の駒の後方(ネックの反対側)が盛り上ってくるという状態になります。
② 素材等の問題
 楽器の主材料である木の材質及びニス等の材質により、耐用年数に差が発生しているのではないでしょうか。ただ丈夫なギターが出来ても、ギターとしての特色が失われたのでは本末転倒となりますので、難しいのでしょうね。

 日本にマンドリンがもたらされたのは1901年比留間 賢八によってといわれており、1906年慶応大学マンドリンクラブが日本最初の公開マンドリン合奏を行ったそうです。
 恐らく、マンドリンは当時の楽器がメンテナンスさえ良ければ十分使用に耐えうると思います。現にマンドリンでオールドと呼ばれる製作されて100年以上経過した楽器が現在も素晴らしい音量と音色を出している楽器があると聞いています。 逆にギターは多分当時の音色が出せないのではないでしょうか。そういう耐用年数という観点からすればギターは寿命は100年が限度といわれる管楽器に似ていると思います。
 (あまり関係ありませんが税法上は楽器の種別を問わず償却年限は5年です)

 私の楽器は1965年中出 六太郎作、定価25千円でした。今年で44年目を迎えています。過去力木、糸巻き、サドル等を修理・交換していますが、ネックに反りは見られませんが、駒の後方に若干膨らみが出てきており、フレット及び指板は凹みが目立ち、表面板も傷だらけと満身創痍の状態にあり決して美しくはありません。
 然し乍、44年間北は小樽から関西、四国そして九州は熊本・長崎まで一緒に旅をし、又ろくな手入れもしないのに、頑張って音を出している健気な仲間(?)です。恐らく演奏会だけで90回位は頑張って音を出してくれている筈です。また自宅で休みの日、或いは帰宅後、一人で気が向けばバロックから演歌、ラテン、ポップスまでその日の気分により、ギターで遊んでいます。考えてみれば、女房・子供より長い付き合いをしています。
 当クラブのギターパートの中には(冗談で?意外と本気で?)私のギターは十分償却しているというような人も居ますが、購入時より見映え悪くなっていますが、音が悪くなっていることはないと思っています。まだまだ老骨に鞭打って私と一緒に頑張ってもらうつもりです。

 楽器は弾き手により出る音が全く違ってきます。私のギターも、恐らくもっとギターを上手に弾く人に買われていたら、きっと私よりもっといい音を紡ぎ出していたでしょう。でもこんなに長い期間一緒に演奏を楽しんできたのですから、ギターもきっと満足してくれていると思います。ギターも私も馬齢を重ねてはきましたが、まだまだ頑張って共に音楽を楽しんで生きたいと考えています。