立川マンドリンクラブ会報 第9号2004.11.6発行
「井戸端会議」(2)伊藤 博
【マンドリン】とはどういう楽器なのか、辞典や書物などで調べてみたことがありますか。
まず、「大目本百科事典(小学館昭和46年)」には[リュート属の擬弦楽器。(小さいマンドラ)の意味で、 歴史的にも構造的にも(古楽器マンドラ)を源とする。
今日のものは17世紀にイタリアで開発されたナポリ式とミラノ式のうち、ナポリ式が19世紀後半に改良 されたものである。日本には19世紀末〜20世紀初頭に輸入され、【アマチュァ楽器】として普及し、現在 は【教育用楽器】として多く使われている]と書かれています。(以下、形態・構造・調弦・運指・奏法・ 同属楽器群等について【マンドリン】とは説明されていますがここでは省略します)
また、「標準音楽辞典(音楽之友社昭和41年)」には、ほぼ同じ内容の楽器の歴史・構造・形態・機能・調弦・ 奏法・各弦の音色・音域などが詳細に説明され、最後に【アマチュアとしては常に大きな地位を占めてい る】と特記されています。

高松公民館で練習しているアマチュァの音楽仲間には、コーラス・ギター・ウクレレ・リコーダー・三味線などがありますが、音楽辞典にも百科辞典にもこ とさらに【アマチュア楽器】とか【アマチュア音楽】とかの注釈はついておりません。では何故、マンドリンだけが【アマチュァ楽器】と規定されるのでしょうか。マンドリンを演奏する職業音楽家が非常に少なくて、アマチュァばかりが圧倒的に多いからでしょうか。

マンドリンには【フレット】という便利な装置と、複弦を活用した【トレモロ奏法】の発明で、職業音楽家の指導に頼らなくても習得が容易であり、それなりに深くてかなり高度な音楽表現が可能な【アマチュァのための代表的な弦楽器】なのだと理解すべきだと考
旧制中学2年で敗戦を迎えた私は、氾濫した雑多な音楽遍歴の末にマンドリン・ギターのプレクトラム楽器に出会い、その可憐で憂愁に満ちた音色を持っ音楽の虜になりました。魅力はそれだけではありません。

ヴァイオリンと同じ調弦(EADG)なので、弦楽や管弦楽などの楽譜を簡単に転用することができます。アマチュァの音楽活動のすべてを【アマチュア自身の手作り】で運営できるのです。この貴重な実感は経験した者でなければ解かりません。

 マンドリン博物館を作り、マンドリニストとしても著名な南谷博一氏が平成11年に出版した「マンドリン事典」には19世紀中頃に.ヴィナーチャによる優れた改良の結果、現在私たちが使っているマンドリンの型になった。その頃イタリアでは後に皇后になられたマルゲリータが王女の頃にマンドリンを姶められ、イタリアにマンドリンブームが沸き起こり、以後半世紀の間イタリアでは【老若男女が富める者も貧しき者も、朝な夕なにマンドリンを弾き心酔した時代】が続いた』と書かれています。【老若男女が貧富の差なく】とは、職業的弦楽器ではなく【アマチュァ演奏者が気軽に楽しめる最適な弦楽器】だということを証明しています。


立川マンドリンクラブが、創立以来、音楽の専門家に指導を依頼するのではなく、すべて仲間の中の優れたメンバーが夫々を分担して、運営して行くシステムを作り上げて来たことを誇りに感じています。演奏会の結果だけに全ての価値を求めるプロの音楽とは全く異なり、演奏会の企画・選曲・手作り編曲・練習内容・プログラム作成・聴衆動員など、全てに創造の楽しみを求める【アマチュァ音楽】の魅力なのです。あなたはこれをどのように考えられますか。